和田智恵さんに聞く

株式会社 加藤建設
 (一社)愛知県土木研究会

『いつか構造物銘板に自分の名前』

ーーお仕事の内容について教えて下さいーー
 現在は、高速道路の橋脚をつくる現場で施工管理業務をしています。現場では安全管理を中心に測量業務等の施工管理を行っています。 

ーー建設業界に入られたきっかけは何ですかーー
 現場経験年数は1年3カ月です。高校1年生の春、東日本大震災が発生、押し寄せてくる津波を高速道路の盛土がくい止めている映像を見て、すごいと思ったことです。その後、大学のオープンキャンパスで土木系学科を知る機会があり、頭の片隅で残っていた盛土の映像が「土木」という分野として頭で繋がり、自分もいつかこういう仕事に携わりたいと思ったことがきっかけです。大学に入り、コンサルタントや公務員の仕事など色々考えましたが、私は現場に出て、構造物が出来上がっていく過程を近くで見たいと思いました。  

ーー建設業界の魅力とはーー
 現場での施工管理業務をしていると、構造物が出来上がっていく過程を見ることができるということ。図面ではまだ現実にはないので2次元のもの、空想上のものが現実に存在するものになっていく、そのことに自分が関わっているということ。自分のしたことが、形として残り、地図に残ることです。 

ーー男社会と言われる建設業界で女性としてのハンデや良かった事などがありますかーー
 女性としてハンデに感じたことはあまりありません。ただ、重い物を持つときに、作業員の方に手伝ってもらったり、声をかけて貰える事はありがたいと思っています。

【拡声器を持って支持を出す和田さん】

ーー現場で働く女性の皆さん(女性技能者・技術者)に対する会社(現場)の反応や変わったことはありますかーー
 弊社で初めて女性技術者として採用していただき、お互い手探りという状態でしたが、現場の女性用トイレ設置や、事務所内に更衣室を設けていただき
ました。また、女性一人で孤立することのないようにと派遣の事務員を現場事務所に配置し、設備、環境ともに整えてもらいましたので、とても働きやすいと思いました。職人の方からは「最近、女性の監督が増えてきているから頑張って」と声をかけてもらいますし、わからないことを聞くと丁寧に教えてくれます。 

ーー女性が働く上で、建設業界や現場に求める改善点などはありますかーー
 女性用のトイレなど設備関係はとても充実していると思うのですが、男性用のトイレは入り口の扉がない場合がある。男性用の設備も女性用と同等のものにすればいいと思います。女性が使っていいなと思うものは男性の方が使っても便利なものだと思います。また、男女差があまりにあると、使っている側としても申し訳ないと感じる時があるので設備面では同等の扱いをしてほしいと思います。

ーー現場で常に心がけていることはありますかーー
 男性の人にも負けないようにと思っていますが、自分らしさ(女性らしさも含めて)を忘れない、男性社会だから仕方がないと諦めるのではなく、私の場合どうすればいいのか考えて行動することを心がけています。

ーーツライと感じたこと、それでも諦めずに続けてこられたのはーー
 自分のミスですが、測量の間違い等を立て続けにミスしてしまった時は落ち込んだり、悔しくなったりします。そういう時は自分の現場の橋脚を見て、私はこれを作っていると改めて実感し、落ち込んでいる場合ではないなと思い、頑張ろうと思います。 

ーー未来の自分についてーー
 今はまだ結婚や出産のことを深く考えていませんが、このまま現場監督を続けていきたいと思います。いつか監理技術者になり自分が携わった構造物に銘板を残したいです。そのために今はセミナーに参加して、先輩の女性技術者からアドバイスを頂き、会社ではどのような取組みをしているのか聞いています。 

ーー建設業を目指している女性に向けてメッセージをーー 
 やはり、現場で施工管理をしたいと思う反面、やっていけるだろうかという不安もありました。ですが、不安なんて感じる必要なかったと思うくらい現場の人たちは私のことを受け入れてくれました。私にはできないと思って諦めるのではなく、機会があれば一度、女性のいる工事現場を見てほしいと思いますし、可能であればその人から話を聞いてほしいです。やりがいはどの職業にも負けなくらいあるので、是非この業界に入ってきてほしいと思います。

ーー貴方の大切な時間を教えて下さいーー
 実家で飼っている猫と遊ぶことです。気まぐれなところもあるので相手にされないときもたまにありますが、そういう時は買い物に出かけます。仕事中は作業着でおしゃれをすることができないので、休日に出かけるときは服装や化粧など色々考えて出かけます。買い物をしている時も楽しいですが、出かける前の準備が楽しく、気分転換になっています。